大会の本当の意義を香港で知る
(この原稿は2016年8月頃にフリーペーパーdacoウェブサイトに掲載された「タイでプロレス興行を目指す男の記録 第16回 の再掲載です)
アジアプロレスサミットを名乗る実行委員会ですが、
私も含め、誰もタイ以外のアジアでのプロレス興行を生で見たことがありませんでした。
各国から参加する選手への声かけも他人任せ、、、
これは良くないことです。
実は全く興味がなかった訳ではなく、シンガポールやマレーシアなどで開催されているプロレス興行にタイの選手が出る話を聞く度に
「行きたい!」
と思っていました。
ですが、なぜか毎回毎回どうしても外せない自分の仕事とかぶってしまい、行く機会を逃してしまっていたのでした。
やっと行けそうなアジアのプロレス興行が6月下旬にありました。
場所は香港。
タイやシンガポールや日本からもたくさんの選手を集める大きな大会があるという話を聞き、
サワディカップに出場予定の選手も多く参加しているとのことだったので、このチャンスは逃してはならないと決心し、本業の仕事が忙しい時期だった為、1泊2日の強行軍で行くことにしました。
この大会にはジャパンエキスポの興行で怪我をさせてしまった、
彼との再会も楽しみの1つとなりました。
香港での大会を仕切っているレスラー兼プロモーターの「ホーホールン」選手に連絡を取ったところ、
チケットはこちらで用意するから喜んで歓迎しますというメッセージが。
私、そんなに英語は得意な方ではないのですが、まぁ何とかなるだろうと思いつつ。。。
ところが大会前々日にトラブル発生!
香港サイドでビザ手配の不手際があり、
日本やタイやシンガポールなど外国人の選手の試合出場が出来なくなったというニュースが入りました。
「大会中止か?」と思ったのですが、
香港の選手だけで決行されるという話。
最大の目的は香港の選手と会うことだった私ですので、決行されるのなら私も変更なしで行くことに。
ただ、不安だったのは、アジア各国からあれだけの選手を招待していた興行にチケットを買った香港のファンたちは怒っていないのだろうか?
観戦ボイコットとか土壇場で興行中止とか、最悪は暴動とかにならないのか?
という不安を感じながらの旅路となりました。
前回香港に行ったのは香港返還前、という恥ずかしい私。
もう初めての香港と言ってもおかしくなかったのですが、なんとか無事に会場へ到着すると意外な光景が。
ファンがたくさん並んでいました。
「興行は中止じゃないな」
とひと安心。
受付に行き、ヘタクソな英語でホーホールン選手を呼び出してもらいます。
すぐに現れた彼の最初の一言は
「I am so sorry like this.」
と両手を合わせて私に近づいて来るのでした。
つまり、この興行に外国人選手が出場出来なくなったことをまず私に謝罪してきたのでした。
もちろん、ファンとしては見てみたい試合もありましたが、
チケットも招待していただいているし、プロレスを見に来たのではなく、彼らに会いに来たのですから謝罪される筋合いはありません。「全然問題ないよ」と、それだけはちゃんと伝えました。
試合前でしたので長話は出来ないので、試合後にまた会いましょう、ということで別れました。
彼と別れた後、私の心にうず巻くような気持ちが湧いてきました。
プロモーターのホーホールンさん、誰よりも悔しい想いをしたのは彼自身に違いない。
なのに私に謝ってきた。
今日は私だけでなく、何度も何度も彼は謝っているのだろう。
彼の気持ちが痛いほど私の心にズシンと伝わってきました。
会場には出場予定だった外国人選手の姿も多数見ることが出来ました。
航空券も発券し、ホテルも押さえていたし、スケジュールも空けていた訳ですから、試合には出られなくても香港には行こう、という人々です。
タイから出場予定だった「Bad Company」の姿もあり、日本からは我闘雲舞のさくらえみさんとも親しく、欧米など海外での試合経験が多い、有名女子プロレスラーの「松本浩代」選手とも初めてお会いすることが出来ました。シンガポールからも多くの選手が来ていました。
彼らはリングに上がって挨拶とかもしてはいけないということで、リングサイドの客席で彼らと一緒に並んで観戦となりました。
リングにスポットライトが点いていよいよ興行スタートとなった時、満員の会場で私は想定外の状況を目の当たりにしたのでした。
(外国人選手が出られなくなったことで幻となった宣伝ポスター)
(ホーホールンに用意してもらったチケット)